研究概要 |
1。研究目的 繊維を染料で染める方法の一つに以下の原理に基ずく建染法(バット法ともいう)がある。すなわち、水に不溶性の建染染料をハイドロサルファイトナトリウム等の還元剤で還元するとロイコ体となり、水溶性となる。このロイコ体を浸して染着させ、水洗後、空気等による酸化によって発色させ、繊維上に、もとの不溶性の染料を再生すると、染色物が得られる。本研究は、この建染法の染色原理に注目し、この原理を堅牢な建染染料の薄膜化に応用するものである。すなわち、空気酸化による不溶化のプロセスを電気化学的な酸化に置き換えてやると、電極上に建染染料の薄膜を作製できるはずである。そこで、本研究では、(i)どのような建染染料が薄膜化できるのか、(ii)作製条件と得られる薄膜の諸物性との関連を明らかにし、本法の有用性を検討し、新しい製膜法の基礎原理を確立することを目的とする。 2。研究実績 (i)建染染料をアルカリ条件下でハイドロナトリウムを用いて還元し、酸化インジウム電極(ITO)を電極として電解酸化したところ、電極上にこれらの薄膜が得られた。代表的な建染染料について本法による薄膜化を試みた結果、インジゴ、インダンスレンブリリアントグリ-ン、インダンスレンオリ-ブT,スレンオレンジ等多数の建染染料が薄膜化された。 (ii)得られた薄膜の形態は電解条件に大きく依存していた。建染染料の濃度が低く、電解時間が長い場合には、得られた薄膜は不透明であり、SEM像により、薄膜は比較的大きな粒子より構成されていた。一方、建染染料の濃度が高く、電解時間が短い場合には、得られた薄膜は透明であり、薄膜は比較的小さな粒子(約0.3μm以下)より構成されていた。 これらの結果より、本法が有力な薄膜作製法に成りうることが明かとなった。
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