研究概要 |
次のような興味ある研究成果を得た。すなわち,(1)種々の大きさの2種のポリスチレン粒子の組合せからなる二元合金構造を沈降平衡下で発現させることに成功した。粒径と電気2重層の厚さの和の差異の程度に応じて,置換型合金構造,MgCu_2型超格子構造,NaZn_<13>型超格子構造および単一粒子からなる面心立方格子などが混晶として存在することが明らかになった。超格子構造の存在に対応して反射スペクトルに鋭いピ-クが多数出現し,ピ-ク波長から格子型などが推定された。(2)反射スペクトルのピ-ク波長の高さ依存性から結晶弾性率が評価された。18から108Paあった。(3)二元超格子構造の発現には数日から数週間の日数を要するが,結晶の種類によって結晶生長の速さに差異があることが判明した。(4)二元混合系の粘度測定を行った。粒子の混合比によって分散液の比粘度は直線的に変化するのは気体状構造の混合だけであった。液体状構造の混合系では直線性から負のずれを生じた。合金構造を発現する混合系では比粘度の値は混合比のわずかな変化により大きく変動し,鋭い山が1個ないし2個出現した。(5)大きさが異なる3種のポリスチレン粒子からなる三元合金構造を発現させることに予備的ではあるが成功した。(6)合金構造の発現にはコロイド粒子のまわりに形成される電気二重層の存在が根本的に重要であることが判明した。合金構造の種類は電気二重層の厚さ(デバイ長)を含めた粒子の実効径の比により微妙に決定されていることが明らかになった。結晶構造の発現には粒子間の静電的斥力が本質的に重要な役割を果しており、本邦の一部の研究者が主張する引力説は全くの誤まりであることは明白となった。
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