グロ-放電プラズマ(低温プラズマ)は、導電性の流体である。そこで、これを媒体とする電気化学システムを構築する可能性がある。この可能性を追求した。まず、気相電解を行うための基礎デ-タを集めた。電解を行うためにはある程度の導電性が必要である。そこで、一般に良く用いられるアルゴンのグロ-放電プラズマの電気伝導度に及ぼすプラズマパラメ-タ-の影響をダブルプロ-ブを用いて測定した。その結果、電子密度は印加電力の増加とともに増加するが、電子温度は印加電力にはほとんど依存しないことが判った。アルゴンイオンプラズマの導電率は10^<-1>〜10^<-2>Scm^<-1>であった。 実際の気相電解析出は、ヨウ素の系と、塩化ジルコニウム/塩化イットリウムの系について行った。銀電極上に直接の化学反応を防ぐために銀イオン導電性ガラスを取り付け、ヨウ素プラズマ中に設置した。対極との間に銀電極が正となるように直流電圧を印加すると、直流電流が流れ、電解反応が進行した。X線回析、SEM、EPMA測定より、銀イオン導電性ガラス上にヨウ化銀が析出していることが判り、その析出量は流した直流電流量に比例することが明かとなった。その電解析出反応機構は、銀電極/銀イオン導電性ガラス界面で銀が酸化されて銀イオンとなり、銀イオン導電性ガラス中を移動する。そしてガラス/プラズマ界面で電子によって還元され、プラズマ雰囲気中に存在しているヨウ素分子あるいはヨウ素ラジカルと反応してヨウ化銀が生成すると考えられる。直流印加電圧と直流電流、プロ-ブで求めたプラズマの導電率の関係より、印加電圧のほとんどは電極/プラズマ界面で形成されるシ-ス部で消費されていることが判った。また、塩化ジルコニウム/塩化イットリウム系においても、プラズマを用いた気相電解析出によってイットリア安定化ジルコニア(YSZ)薄膜が生成することが明かとなった。
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