当該研究者らは、ジルコニアを担体の主成分とする貴金属系触媒が水素製造のための水蒸気改質反応に低温できわめてすぐれた性能を示すことを見い出している。本研究では、おもに昇温反応(TPR)法によるnーブタンー水蒸気反応や一酸化炭素ー水蒸気反応を、場合によっては重水を用いて行ない、以前に行なった動力学測定や若干の触媒物性測定結果と合わせて考察することによって、触媒の作用機構とジルコニアの促進機能についての解明を図った結果、以下のことが明らかとなった。 1.Rh/ZrO_2触媒において、ロジウム上への炭化水素の解離は充分速く進行する。 2.本反応の酸化過程における反応中間体は、アルデヒド種、またはギ酸種である。 3.触媒上に解離吸着した炭化水素(CH_x)は、担体酸化物上の表面ヒドロキシル基により酸化され、CH_x→CO→CO_2の順に酸化される。 4.Rh/ZrO_2触媒のすぐれた低温活性は、ジルコニア表面上のヒドロキシル基の酸化能力におもに由来する。 5.Rh/ZrO_2触媒にイットリア、セリアなどを添加したことによる低温での性能促進は、それらの添加が表面ヒドロキシル基の増大をもたらしたことによってジルコニアの酸化能力を助長したと考えられる。 6.Rh/ZrO_2触媒にマグネシアを添加したことによる低温での性能促進は、マグネシアの添加によるロジウムへの担体からの電子供与能の増大が寄与していると推論される。 以上に述べたように、本研究によって、低温水蒸気改質反応用触媒の作用機構をかなり明確にモデル化することができた。今後は、触媒調製に新規な工夫を図ることによって、より一層の高機能触媒を創出したいと考える。
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