研究概要 |
ホスホン酸でジルコニウムは層状化合物であり、組成式Zr(O_3PーR)_2で表すことができる。この-Rの部分に様々な官能基を導入することが可能であり、その官能基の種類により層間距離を制制するとともに、酸性質や疎水性等の性質を付与することが可能である。これまで、-C_6H_5,-C_<12>H_<25>,-CH_2COOH,-CH_2SO_3H等の官能基が、ジルコニウムの層にぶらさがった形をとるペンダント型と呼ばれるものについて研究を行ってきた。本年度は原料にデシルジホスン酸を用いることにより、層と層とをアルキル基で架橋したピラ-型と呼ぶものの合成を試み、その性質について検討した。Zr(O_3PC_<10>H_<20>PO_3)の層間距離はXRDより求めた値と計算値とがほぼ一致しており、また ^<13>ClCPーMASNMRの結果より、メチレン鎖のみが層間に存在していることが示唆された。これらのことから、デシル基は層同志を架橋したピラ-となっていることが解った。このピラ-型のもつ構造を触媒として利用する為に、酸性基を同時に導入した複合体を合成した。複合体の層間距離は、酸性基の導入量にかかわらず常に一定でデシルピラ-単独体と同じであった。また、MASNMRの結果から、複合体では双方の官能基が層間内に存在していることが解った。これらのことから、ピラ-型もペンダント型と同様に複合化が可能でありその構造は、デシル基のピラ-により層間が保持され、生じた広い層空間に酸性基が存在しているものと考えられる。この複合体の触媒機能を検討するため酢酸のエステル化反応を行ったところ、複合化によって触媒活性が著しく向上することが解った。Zr(O_3PCH_2SO_3H)_2は反応溶液中で溶解してしまうが、これに不溶性を与えるのにもピラ-との複合化は有用で、ピラ-をわずかに導入した複合体でも溶解しなかった。このことは、ピラ-体は層同志がアルキル基により架橋されている為、層構造がより安定に保持されていることを示唆している。
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