研究概要 |
多孔質アルミナの表面上にパラジウム薄膜を担持した複合膜は選択的に水素を透過し、実用化されているパラジウム膜に比べて10倍以上の大きな透過速度をあたえる。この複合膜を分離膜として組み込んだメンブレンリアクタ-のエチルベンゼン及びプロパンの脱水素反応への適用性について検討した。本反応は吸熱反応であるため、十分高い転化率を得るためには熱力学的に高い反応温度が必要である。しかし、メンブレンリアクタ-を用いると生成した水素が反応系外に除去されるため、従来の反応形式に比べて高い転化率が得られ、反応条件の緩和が可能であることがわかった。また、生成した水素を除去することにより、副反応である水素化分解が抑制され、スチレンやプロピレン選択率が向上することを見いだした。 さらに、プロパンの脱水素環化反応への適用性について検討した。特異な固体酸性と形状選択性を有するZSMー5ゼオライトとGa,Zn,Ptを組み合わせた触媒が本反応に高い活性と選択性を示すことが見いだされている。しかし、併発する分解反応によりメタンやエタンなどが生成するので芳香族収率には限界がある。この反応にパラジウム薄膜を用いたメンブレンリアクタ-を適用したところ、プロパンからプロピレンへの脱水素が優先的におこり、これまでにない高い芳香族収率(約80%)が得られることを明らかにした。 以上のように、メンブレンリアクタ-を使用すると反応効率が向上するだけでなく、反応の選択性も増大することを実証した。
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