石炭液化反応における気相水素、溶媒、触媒の作用について、水素化活性の高い触媒の場合は、溶媒の性質には関係なく、気相水素が触媒を介して直接石炭に作用するが、水素化活性の低い触媒では、溶媒の水素供与性も寄与することを報告してきた。しかし如何なる反応に基づくかは明らかにできなかったので、石炭中の芳香族、エ-テル結合、メチレン結合を考慮して、ベンジルフェニルエ-テルおよびジベンジルを試料として、安定化ニッケル触媒と、合成硫化鉄触媒を用い、ナフタレン、テトラリン、デカリンを溶媒とする高圧水素化分解反応を反応温度250〜500℃、水素圧3〜10MPa、反応時間0〜60minの条件にて検討した。 安定化ニッケル触媒によるベンジルフェニルエ-テル、ジベンジルの水素化分解反応において、芳香環の水素化反応は、250〜350℃程度の低温でも起こり、ベンジルフェニルエ-テルのCー0結合は、ほぼ完全に切断した。高温では脱水酸基が起こり、芳香環の水素化を抑制した。ジベンジルのCーC結合は、330℃以上の温度で切断された。水素分圧を高くすると、縮合や重合反応を妨ぎ、ガスの発生を抑制し、芳香環の水素化と分解生成物から水酸基の脱離を促進した。溶媒としてはデカリン>テトラリン>ナフタレンの順で試料の転化を促進した。しかし溶媒自身の転化率はデリカン<テトラリン<ナフタレンて逆順であった。 合成硫化鉄触媒は分解と再縮合、弱い水素化に活性を有するために、安定化ニッケルとは異なり、ベンジルフェニルエ-テルの反応においては、水素化された生成物はほとんど認められなかった。また反応初期に多量の縮合物を生成し、反応の進行とともに縮合物が分解して、低分子の生成物に転化させることが示唆された。ジベンジルはFeS_2触媒系では、450℃以上ではほとんど反応しない。これも安定化ニッケル触媒との大きな違いである。
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