研究概要 |
本研究は、スルホニル基の1,nー転位がチオ基置換ポリエン系で容易に起こることに着目し、この転位を詳細に検討するとともに、新規かつ簡便な共役ポリエン系カルボニル化合物の合成法に応用しようとするものである。本研究では、入手容易なメチルチオメチルpートリルスルホン(1)から、共役ポリエン系スルホン化合物への誘導、ついで酸によるスルホニル基の1,nー転位を行う。本研究では二重結合4個が共役した系までを研究対象とするが、平成2年度は1からの転位前駆体の合成とともに、スルホニル基の1,nー転位および共役ポリエン系カルボニル化合物への誘導に対する反応条件の検討を行った。 1.転位前駆体の合成:1のトリメチルシリル化体をアニオンとしたのち、各種の不飽和アルデヒドと反応させた。さらに、塩基によるアニオンの発生と、それに続くハロゲン化アルキルあるいはプロトンとの反応による経路を詳細に検討し、収率よく転位前駆体を合成する条件を確立した。不飽和アルデヒドとして、エナ-ル、ジエナ-ルおよびトリエナ-ルを研究した結果、塩基としてカリウムtーブトキシドの使用が好ましいことを明らかにした。 2.スルホニル基の1,nー転位と、共役ポリエン系カルボニル化合物への誘導:前項で得られた転位前駆体のスルホニル基の1,nー転位の反応条件を検討したが、シリカゲル処理により収率よく転位できた。転位に関与する二重結合の数が増えると、転位中間体が種々生成するが、処理時間を長くすることが収率よく1,nー転位生成物を得ることができた。転位生成物のNaHとハロゲン化アルキルによりアルキル化が進行し、続いて水ーメタノ-ル中塩酸により加水分解すると、共役ジエノン、ジエナ-ル、トリエノン、トノエナ-ルへ誘導できることも明らかにできた。
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