研究概要 |
本研究は、スルホニル基の1,nー転位がチオ基置換ポリエン系で容易に起こることに着目し、この転位を詳細に検討するとともに、新規かつ簡便な共役ポリエン系カルボニル化合物の合成法に応用しようとするものである。本研究では、入手容易なメチルチオメチルpートリルスルホン(1)から、共役ポリエン系スルホン化合物への誘導、ついでシリカゲル等の弱酸によるスルホニル基の1,nー転位を行う。本年度は二重結合が4個共役した系(n=9)系を中心に前年度に続いて研究を行い、以下のような成果を挙げた。 1.転位前駆体の合成:メチルチオメチルpートリルスルホン(1)のトリメチルシリル化体をさらにアニオン化し、2,4,6ーオクタトリエナルを反応させると、1との縮合体が得られる。さらにカリウムtーブトキシドでアニオンを発生させたのち、水を加えると、転位前駆体である9ーメチルチオー9ー(pートリルスルホニル)ー1,3,5,7ーノナテトラエンが得られる。また、アニオンをハロゲン化アルキルと反応させると、1ーアルキル置換9ーメチルチオー9ー(pートリルスルホニル)ー1,3,5,7ーノテナトラエンが収率良く生成することが分かった。 2.スルホニル基の1,nー転位と共役ボリエンカルボニル化合物への誘導:前項で得た1,9ー転位前駆体のスルホニル基の転位条件を検討した。昨年度の1,nー転位(n=3,5,7)の最も一般的なカラムクロマトグラフィ-上(シリカゲル)による手法では、所望の1,9ー転位生成物は低収率にとどまった。種々検討の結果、小過剰量のシリカゲル共存下クロロホルム中室温で撹拌する方法を開発した。この転位の機構についても詳細に研究し、スルホニル基のスルフィナトイオンとしての脱離ー再結合によることを明らかにした。このように、転位反応を利用することによって、高度に共役した化合物の誘導方法を確立することが出来た。
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