研究概要 |
太陽光のエネルギ-の有効利用に間して光電子の移動についての研究が盛んに行われていて,これを積極的に高分子の合成に応用してみた.光重合研究は,主として単量体をドナ-・アクセプタ-系例の一成分として含む光電荷移動重合なので,本研究では再生可能な増感物質である遷移金属錯体を光電子移動サイクルを中心において,それが繰り返し機能して,重合反応の開始に寄与するように光増感重合系を設計した. まず増感物質として,トリス(2,2'ービジピリジン)ルテニウム,トリス(2,2'ービピラジン)ルテニウム,およびビピリジンとビピラジンを混合配位子としたルテニウム(II)錯体を合成した.トリスビピラジンテニウム(II)の系では,1価のルテニウムの遷元力が弱いために,アクリルアミドへの電荷移動がおこらず1価のルテニウムが蓄積した.,本研究ではこの結果を基に,混合配位子錯体について容媒が水とDMFの2つの系で行った.電子供与体にテトラメチルアミン,単量体にアクリルアミドを用いるとき,水系は重合速度が極めて遅く,DMF系はそれはいくぶん速くなったが,両者ともに1価のルテニウムの蓄積がみられ,必ずしもよいサイクル系とはならなかった.1価のルテニウムからアクリルアミドへの電子移動の効率を高めるために,水容媒の系にアクセプタ-性の強いマレイン酸を添加すると,2価のルテニウムが再生し,分子量の大きいアクリルアミドの重合体が得られ,サイクルが成立した.ここで,マレイン酸の濃度が低いと重合速度はいったん上昇したが,そののち下降し,再び濃度の増加とともに重合速度は速くなった.このことは,低能度では1価のルテニウムからマレイン酸へ,高濃度では2価のルテニウムからマレイン酸へ電子が移動したと考えられ,マレイン酸濃度で重合機構が変わったものと解せられる.
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