研究概要 |
かさ高い立体構造を有する高脂溶性の安定有機陰イオン種として分子設計した多数個の含フッ素置換基を導入したテトラフェニルホウ素ア-ト錯体(TPB)の合成及びその脂溶性と化学的安定性に関して以下の成果を得た。 1)目的とするTPB誘導体の合成中間体となるポリフルオロアルキル置換ベンゼン誘導体のそれぞれ対応する合成法を開発した。2)立体的にかさ高く、多数個のフルオロ基を有する直鎖型及び分枝型アルキル置換基をTPB骨格フェニル基上の3ー位に単独及び3,5ー位に対称に置換した誘導体、及び3,5ー位にトリフルオロメチル基(CF_3)との組合せで非対称型に置換したTPB誘導体の高効率合成法を開発した。3)合成した含フッ素TPB誘導体のテトラメチルアンモニウム塩について疎水性有機溶媒への溶解度を測定した。側鎖末端に多数個のCF_3基を有する分枝型置換基が溶解度の増大に有効であり、特にフロロエタン系低極性溶媒に対する溶解度を増大する特徴を見いだした。直鎖型の場合にはジフロロメチレン基数を増すと溶解度はむしろ低下する傾向を認めた。4)硫酸/ジクロロメタン2相系及びメタノ-ル/硫酸均一系を用いて、上述の含フッ素TPB誘導体の酸分解速度を測定し、分解速度が置換基の電子求引効果の大きさに相関することを見いだした.その結果、分解反応はフェニル基ホウ素ipso位へのプロトンの攻撃が律速段階であり、ペルフルオロアルキル基の中ではCF_3基が最大の安定化効果を示した。5)対陽イオンの求電子性を評価する目的で、DielsーAlder縮合反応に対するアルカリ金属イオンの触媒的加速効果を測定し、高真空下に加熱乾操したリチウム塩が最大の加速効果を示すことを見いだし、かさ高い脂溶性安定陰イオン種によって疎水性溶媒中に可溶化されたアルカリ金属イオン種の求電子効果を例証した。
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