研究概要 |
有機合成化学に一酸化炭素を利用する場合、(i)一酸化炭素の還元能を利用するものと、(ii)有機化合物中に一酸化炭素を炭素源として挿入する場合とがある。 (i)の場合として、塩基存在下セレンを水と一酸化炭素と反応させると、セレン化水素が生成するので、この反応系中に、有機化合物を共存させ、有機化合物の還元を行なった。塩基存在下で元素セレンは一酸化炭素と反応してセレン化カルボニルになり、これが水と反応してセレン化水素を発生するので、セレン化水素の還元能は、使用する塩基の種類、量、反応温度、時間などの諸条件によって調節できる。そこで、この一酸化炭素ーセレンー水系中に共存させる次の有機化合物を選び、これらの反応について検討した。 (1)脂肪族ケトンと芳香族ケトンとの還元反応条件の差および環境の異なる2種類のカルボニル基をもつ有機化合物への一方のカルボニル基のみを選択的に還元した。 (2)vicー二臭素化物の脱臭素化による二重結合の生成およびαーハロケトンの脱ハロゲン化を行ない、相当するアルケンおびケトンを高収率で得る条件を見いだした。 (ii)の有機化合物中に一酸化炭素を挿入する反応としては、つぎの反応を検討した。ベンゼン溶液中で1,1ーあるいは1,2ージフェニルアルカンを塩化アルミニウム触媒を用いて、フェニルアルキルカチオンを生成させ、これに一酸化炭素を圧入すると一酸化炭素とカチオンとが反応して、アシルカチオンになり環化反応を起こして、2ー二置換ー1ーインダノンが生成することを認めた。さらに、一酸化炭素の反応性とカルボカチオンの構造や ^<13>CーNMR化学シフトとの関係を検討した。
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