報告者はアセチレン化合物のシリルホルミル化にはロジウム錯体のみが特異的に触媒作用を示し、かつ、末端アセチレンではホルミル基の導入位置を厳密に制御できることを見出した。本研究ではこの反応を更に発展させるため、(1)ロジウム錯体の触媒機構の解明、(2)内部アセチレン結合におけるシリルホルミル化の位置制御、(3)αーシリルメチレンーβーラクトン骨格合成法の開発に焦点を合わせた。その結果、(1)においては直接の活性中間体を単離するには至らなかったが、2種類のRhーSi結合を含む新規錯体および2種類のアセチレン錯体を単離し、その反応挙動の追跡から、シランおよびアセチレンが逐次反応し、アシル錯体を経由する触媒サイクルの概略を把握できた。次いで(2)においては4ーヘプチニルジメチルシランのシリルホルミル化では分子内反応のみが進行し、しかも、二つのアセチレン炭素のうち、ケイ素原子から離れた位置の炭素原子のみが選択的にホルミル化されることが明らかとなった。この結果、内部アセチレンに対してもホルミル化位置制御の手法を確立できた。同時に分子内にヒドロキシ基が存在してもシリルホルミル化反応自体には全く悪影響を及ぼさないことも明らかにした。これらの知見はアセチレン分子の適切な位置にヒドロキシ基が存在する場合、反応条件を調節するだけで、アセチレン化合物から一挙にαーメチレンラクトン骨格の組立ができることを示唆している。事実、2ー置換プロパルギルアルコ-ル誘導体に対してロジウム錯体と共に、ジアザビシクロウンデセンを助触媒としてシリルホルミル化を行うと、一挙にαーメチレンーβーラクトン類が得られた。従来、αーメチレンーβーラクトン骨格合成の一般的手法は殆んど報告されておらず、この点においても本研究は大きな貢献をなし得たことになる。本補助金によって購入した積分計は異性対比の定量に十分活用され、大きな成果をもたらした。
|