研究概要 |
1)β,δーケト酸のパン酵母による位置および立体選択的還元 基質としてRC(=0)CH_2(=0)CH_2CO_2H,R=C_2H_5,nーC_3H_7,nーC_4H_9,nーC_5H_<11>,nーC_8H_<17>を用いると,8位のC=0が還元されたものが14〜36%,これらからの脱炭酸生成物が6〜14%,β位のC=0が還元されたものが0〜3%,2つのC=0がともに還元されたものが0〜12%の収率で得られた。いずれも>99%eeでR配置であった。これらから対応するβーケトーδーラクトン,βーヒドロキシーδーラクトンを製取した。δ位のC=0が優先して還元されるが,生成物のδーヒドロキシーβーケト酸はもはや還元されないことが明らかになった。一方,わずかに生成したβーヒドロキシーδーケト酸はさらに還元されて,β,δージヒドロキシ酸になることも明らかになった。 R=CH_2=CHCH_2CH_2,C_6H_5CH_2CH_2,C_6H_5CH=CHを用いると,興味深いことに,δ位のC=0のみが還元された生成物が収率〜50%で得られた。コンパクチンなどの生理活性物質の合成に用いられるβーヒドロキシーδーラクトンの合成に向けた研究の端緒が開かれたといえる。 2)βークロローγーケト酸およびそのエステルのパン酵母による立体選択的還元 基質としてRC(=0)CHClCH_2CO_2R′,R′=H,Me,Et。 C=0基のα位にCLを置換するとC=0の還元にどのような影響が出るのか,ケト酸の場合とケトエステルの場合でどのような差が見られるのか,を明らかにすることができた。ここでR=CH_3ではいずれもS配置の2級アルコ-ルを>98%eeで生成したが,C_2H_5→C_4H_9について,酸では段階的にR配置>98%eeへと変化し,エステルではS配置のまま85%eeへと低下した。収率,ジアステレオマ-比についても新しい知見を得ることができた。
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