研究代表者は、パラジウムなどの遷移金属化学物の特性を活かすことにより、簡便な手法で効率的に有機化合物を変換する方法を開発してきた。とくに、入手容易なアルケニルオキシランをパラジウム触媒存在下、ギ酸と反応させることにより立体選択的に還元開裂できることを見出だした。本研究では、このパラジウム触媒によるアルケニルオキシランの還元開裂反応が、アルカロイドなどの含窒素化合物の立体選択的合成に有用であることに着目し、本反応を基軸とする新規な光学活性なピペリジンアルカロイドやインドリチジンアルカロイドの合成を計画実行し、成果をおさめた。すなわち、アリル型アルコ-ルを光学活性な酒石酸エステルを配位子とするチタン触媒存在下tーブチルペルオキシドと反応させることにより、光学活性なエポキシアルコ-ルを得、アルコ-ルの酸化、つづくオレフィン化反応を経てアルケニルオキシランを合成した。得られたアルケニルオキシランを、パラジウム触媒存在下でギ酸と反応させることにより、立体選択的に加水素分解反応を行いホモアリル型アルコ-ルに変換した。水酸基を立体反転で窒素原子と置換し、分子内のカルボニル基とピペリジン環を形成させ、目的のアルカロイド骨格を得た。この方法により、漢方薬川骨より得られたヌファラミンおよびパナマ産矢毒ガエルより単離されたアルカロイド205A、209B、235Bの合成が達成された。また、鍵反応であるパラジウム触媒反応の反応機構を解明する目的で、中間体を仮定されるギ酸πーアリルバラジウ錯体を合成し、その分解反応を調べることにより反応機構の詳細を明らかにした。
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