本研究課題の目的は三成分高分子溶液中での高分子形態変化を分子運動の側面から検討することにある。更に、高分子の種々の運動モ-ド間のカップリングを光プロ-ブ法から検討することも含まれている。 (1)光プロ-ブ法を用いた超複合光学測定装置群の作製 吸収・励起・発光・偏光スペクトルと時間分解発光・異方性比スペクトルの測定が可能な超複合光学測定装置群を試作した。本装置では、各測定装置をパソコンに連動させ、デ-タ-をパソコンに取り込み、その場で解析できることが特徴である。インタ-フェ-スやソフトは全て自作したものである。この装置では、測定結果から高分子回転半径、セグメント拡散係数、側鎖の回転拡散係数などがリアルタイムで算出できるようになった。 (2)三成分高分子溶液中での高分子鎖のダイナミックス カルバゾリル基をプロ-ブとして導入した高分子(PMMA、PStなど)を合成し、これら高分子の三成分高分子溶液中での、慣性半径、セグメント拡散係数、側鎖の回転拡散係数の溶媒組成依存性を測定し、理論と比較検討した。ここでは、高分子の拡がりと鎖の堅さの関係が定性的ながら議論可能となった。これらの成果は高分子学会・高分子討論会で発表された。 (3)屈曲性高分子球内部での運動カップリングと内部粘度の関係 アントリル基を末端や中央に導入したポリスチレンを合成し、これらのプロ-ブの位置や重合度の違いによる回転拡散係数を時間分解異方性比曲線の解析(自作ソフト)により得た。ここでは、これらプロ-ブの回転運動が高分子セグメント密度と相関があることを初めて見いだした。この成果も高分子学会年次大会で公表する予定である。
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