研究概要 |
未修飾セルロ-スの非水系溶剤の1つであるジメチルアセトアミド(DMAcーLiCl)を溶媒に用いて,セルロ-ス/ポリエチレンオキシド(CELL/PEO)及びセルロ-ス/ポリ(2ーヒドロキシエチルメタクリレ-ト(CELL/PHEMA)ブレンド膜を調製し,それらの相構造と熱的・力学的性質を調べた。得られた知見は次のようである。 1.CELL/PEO系については,高分子均一混合溶液からメチルエチルケトンを凝固剤に用いて全組成域に渡るブレンド調製が可能であり,その非晶領域における相溶性も良好であった。CELL含有率の増加につれてPEO成分の結晶化度は著しく低下し,CELL分率70wt%でほぼ結晶性が消失した。また,PEOーrichブレンドについて,PEO成分の溶融一等温結晶化挙動をDSC法で追跡すると,PEOホモポリマ-の場合と比べて結晶化速度が大きく減少した。この際の結晶化のKineticsは,本系を結晶性高分子/希釈剤混合系とみなして合理的に定量解析された。一方,応力ーひずみ曲線の測定を行った結果,複合化によってフィルムの破断伸度が増大し,延性が付与されることが分った。 2.セルロ-スのDMAcーLiCl溶液を2ーヒドロキシエチルメタクリレートモノマ-中に凝固させて生じる膨潤ゲルから,モノマ-の塊状重合によってCELL/PHEMA複合膜を調製しえた。圧迫や乾燥を加えずに重合固化させた試料の動的粘弾性を測定すると,E"ピ-クがPHEMAホモポリマ-(Tg=75℃)の場合よりも高温側に位置し,ガラス転移領域以上の温度で弾性率E'の低下が著しく抑制された。また,E"曲線も高温領域で落ち込みが少なくブロ-ドな形状となった。TgのシフトはDSCによる熱分析においても確認した。これらの結果は,PHEMAマトリックス中にセルロ-スのゲル構造が一様に固定化されて,剛性の高いsemiーIPN様の複合体が得られたことを示唆している。
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