1.研究目的 本研究は機能性高分子膜の創成に有効な手段である電解重合に注目し、平面性の強いラダ-ポリマ-の電解重合を磁場の中で行ない、MHD(磁気流体力学)効果により生じる電解液の層流を利用して高度に面配向した層状の電解重合膜を作製する。この時、同時に機能性ド-パント、鉄フタロシアニンを面が突き合わすようにド-プし伝導キャリア-がπ電子の縦供役により移動するようになる。即ち、分子構造及び伝導様式が超伝導を示す分子性結晶に極めて良く似た複合膜を得ることを目的とする。 2.実験結果 (1)縦型電解セルの作成および縦型電解セルに於ける電解液の流れの理論の導入: 横型電解セルを用いて電解重合を磁場中で行った所、対極に気泡が発生し電解中の電流密度・電位を一定に保つのが困難であった。そこで対極に発生した気泡が抜けるような縦型電解セルを考案作成した。横型電解セルにおいてはMNH効果による電解液の流れについて詳しい報告がなされている。しかし、縦型電解セルについては未だ定量的な報告がなされていない。そこで縦型電解セルを作成すると共に電解液の流れの理論を導いた。 すなわち磁性流体のNavierーStokes方程式より縦型電解セルにおける電解液の流速と電解電流密度との関係式を以下のように導いた。 U^2/2=(γ/ρ)BXi........ (1) ここに U:流速、γ:セル定数、ρ:電解液の密度、i:電流密度、X:電極の長さ、B:磁場強度 を表わす。(1)式は磁場強度が一出の時、流速の二乗と電解電流密度が直線関係にあることを示している。 (2)縦型電解セルにおける電解液の流れの再現性の問題と(1)式の有用性について:本実験で作成した縦型電解セルを用いて磁場強度0.45 テスラ-で、電解電流密度を変化させ電磁流量計で電解液の流速を測定した。その結果流速の二乗と電解電流密度が直線関係を示し、(1)式の妥当性が証明された。また、数回同じことを繰り返した所再現性の良いデ-タが得られ、この縦型電解セルは有用であることが分かった。 3.平成3年度の研究計画 上記の縦型電解セルを用いて、ラダ-ポリマ-の電解重合を行い、配向した導電性高分子材料を作成する。
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