研究概要 |
合成化学的シミュレ-ションを行うタ-ゲットの蛋白質としては、プロタミン,RNAポリメラ-ゼII等のDNA結合蛋白質を選び、そのアミノ酸配列の特徴的な面を強調あるいは消去したような蛋白質類似物質(プロテノイド)を合成し、その構造や機能を調べてきた。 1.プロタミンは魚類精子核中でDNAに固く結合し、これをコンパクトに保護・保存する役割を果しているが、その結合様式等の詳細は不明である。多くの魚類種のプロタミン中に保存性よくSーRーPーVというアミノ酸配列があり、分子中の折れ曲り部分ではないかと推測される。一方、プロタミン機能発現機構に関する我々の含成化学的なアプロ-チにより折れ曲り構造がその機能発現に大変重要である事が示唆された。そこでまず、この折れ曲り構造付近の3種類のペプチド(SーRーPーV,SーSーRーPーV,SーSーSーRーPーV)を液相法により化学合成した。 2.上記3種類のペプチドにつき、水溶液や有機溶媒中でCD及び ^1HNMRを測定した。その結果、水溶液中ではいずれのペプチドもランダム構造である事がわかったが、トリフロロエタノ-ル等の有機溶媒中では、特にSーSーSーRーPーVの場合,タ-ン構造の存在が示唆された。これは、DNAに結合しているプロタミン中のこの部分がタ-ン構造をとっている事を示唆する一つの現象と考えられる。 3.転写の際の主役を演ずるRNAポリメラ-ゼII分子中にはーSーPーTーSーPーSーYのアミノ酸配列が繰り返し現れる部分があり、この部分の役割が不明である。この点に関する知見を得るため平成2年度からこの部分の合成を進めてきたが、多くの副反応等のため合成は困難を極めた。平成3年度もこの部分の合成をさらに大規模に進め、目的のポリペプチドを得る事ができた。現在これのコンホメ-ションやDNAとの相互作用を調べている。
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