研究概要 |
プロタミン,RNAポリメラ-ゼII等のDNA結合蛋白質をタ-ゲットに選び、これらの機能の合成化学的シミュレ-ションを行った。 1.魚類精子核中のDNA結合蛋白質プロタミンの分子中央部付近は、DNA結合時に折れ曲り構造をとっていると推測された。この折れ曲り構造と機能発現メカニズムの関係を調べるため、この折れ曲り構造と思われる付近の化学構造を強調あるいは消去したより単純なペプチドを3種類合成した。 2.上記のペプチド類のコンホメ-ションをCD及び二次元NMRで調べ、またDNA安定化能,DNA凝集能等のプロタミン様機能を比較し、この折れ曲り構造部分に含まれるプロリン残基の役割につき考察した。 3.プロタミン分子中の折れ曲り構造と思われる部分には、多くの魚類種のプロタミンにつき大変保存性よくーSーRーPーVーというアミノ酸配列が存在している。この部分のコンホメ-ションやDNA結合時における役割に関する知見を得るため、この配列を含む3種類のペプチド(SーRーPーV,SーSーRーPーV,SーSーSーRーPーV)を合成した。 4.上記3種類のペプチドの水溶液中及び有機溶媒中でのコンホメ-ションをCD及び ^1HNMRで調べた。その結果,ある条件下ではタ-ン構造の存在が示され、これはDNAに結合しているプロタミン中のこの部分がタ-ン構造をとっている事を示唆する一つの現象と考えられる。 5.DNAよりRNAを転写する際の主役であるRNAポリメラ-ゼII分子中にはSーPーTーSーPーSーYのアミノ酸配列が繰り返し現れる部分があり、この部分の役割が不明である。この点に関する知見を得るためこの部分の化学合成を進め、最終目的物のPoly(SーPーTーSーPーSーY)の合成に成功した。現在これのコンホメ-ションやDNAとの相互作用につき調べるとともに、このポリペプチドの大量合成を行っている。
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