研究概要 |
常磁性種として側鎖に安定フェノキシラジカル構造が共役置換したポリアセチレン誘導体の精密合成法の確立を本年度の主目標として、以下の成果を得た。 1.ラジカル発生の前駆体としてフェノ-ル骨格を有するアセチレンモノマ-の精密合成を行った。化学的に活性な部位をアセチル、トリメチルシリル基で保護した上でVilsmeier,Heck反応によりエチニル基を温和な条件下で導入し、3,5ージーtーブチルー4ーヒドロキシフェニルアセチレン、エチニルフェニルヒドロガルビノキシルを収率高く合成した。 2.これらモノマ-をMoCl_5、WCl_6などのメタセシス系触媒、Rh錯体などのウイルキンソン型触媒を用いて重合した。触媒、共触媒、溶媒等の重合条件を探索し、一定の立体構造(シス、トランス)を有し、かつ溶媒可溶な高分子量の共役ポリアセチレン誘導体(平均分子量:1〜2×10^4)を得た。本ポリマ-が溶媒可溶であることを活用して、磁性評価の障害となる微量金属酸化物の徹底的な除去精製を可能にした。 3.溶液状態で活性PbO_2、K_3Fe(CN)_6を用いて化学的に酸化すると、対応するフェノキシラジカルが発生する。酸化条件を選択することにより一定のスピン濃度を有するポリラジカルを得た。極限値に近い高いスピン濃度(4.8×10^<23>スピン/mol)のポリラジカルの調製法を確立した。共役ポリアセチレン主鎖上での不対電子の非局在化、スピン分極機構に基づくスピンのupーdownの伝播が可能であることをESRスペクトルから予備的に明らかにした。
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