1.幹のセルロ-スとして、これまでは分子量が低く溶解性のよい、ろ紙を原料として用いていたが、高度な薬理活性を示す天然の分岐多糖は分子量が高いことが報告されている。そこで、より分子量の高い微結晶セルロ-スを原料に用いて分岐反応を行った。得られた分岐多糖は原料に低分子量のセルロ-スを用いた場合よりも高い水溶性を示した。 2.枝の糖としては、従来のDーグルコ-ス、Dーセロビオ-スのほかに、ガラクト-ス、アラビノ-ス、マンノ-ス、マルトトリオ-スなどを用いて分岐反応を行なったが、いずれの糖を用いた場合も枝の多い分岐多糖が得られた。 3.モデル反応として、2量体であるヘキサアセチルセロビオ-スおよび3量体であるオクタアセチルマルトトリオ-スを用いた分岐反応を行ない、その^<13>CーNMRを詳細に検討し、分岐構造を決定した。その結果、いずれの場合も主として(85%)β結合で分岐が生じており、(1→6)結合以外の結合は認められず、反応操作中に保護基の移動が起っていないことが確認された。 4.この分岐反応は、セルロ-スを幹ポリマ-としてビニルポリマ-の枝を持った、きわめて枝の多いグラフトポリマ-の合成に応用することができた。ジブチリルセルロ-スとナトリウムナフタレ-トとのTHF中での反応によって得られたアルカリセルロ-スにより、メタクリル酸メチルの重合を開始させ、セルロ-スにメタクリル酸メチルをグラフトさせることに成功した。この方法によって得られたグラフトポリマ-は、グルコ-ス単位の62.1%がポリメタクリル酸メチルの分岐をもった(グラフト化度62.1%)、きわめて枝の数の多い分岐構造を持つことが分かった。また、反応機構から推定されるように枝の長さの分布も狭いことが確認された。
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