研究概要 |
本研究は,粉砕により無機固体表面に生成される重合活性なラジカルを利用してビニルモノマ-の重合を試み,これまで複合材料で最も大きな問題であった界面の親和性を大幅に改善できる新しい複合材料製造プロセスの開発に関するものである。昨年度,石英の試料で得られた結果を踏まえて,今年度は石英以外の数種類の無機固体を試料とし,粉砕操作によって生ずる固体表面上のメカノラジカルの測定およびそれらのラジカルの重合反応に対する活性を詳細に検討した。 粉砕機および反応器は昨年度と同様に振動ボ-ルミルおよび窒化ケイ素製のポットとボ-ルを使用し,実験試料に天然の長石,石灰石,滑石,大理石および石英ガラスを用いて2通りの方法で行った。すなわち,無機固体表面に生ずるラジカルの測定のための乾式粉砕と重合反応に対する活性を検討するためのビニルモノマ-溶媒中での湿式粉砕である。以下に新たに得られた主な結果を示す。1)長石を粉砕した場合のラジカル測定では,長石中に極微量含有する鉄イオンのESRスペクトルと思われる波形が観測され,粉砕に伴うラジカル濃度の変化は測定できなかった。2)石灰石,滑石および大理石の粉砕時のラジカル測定では,いずれもマンガンイオンのESRスペクトルのみが観測され,長石と同様ラジカル濃度の変化は測定できなかった。3)石英ガラスの場合は,石英と同様の3種類のラジカル種が観測され,また粉砕時間と共にラジカル濃度が著しく増大することが確認された。4)重合反応に対する活性は,石英ガラスはもちろん,ラジカル濃度変化が測定できなかった4種の試料すべてに認められたが,その活性は試料によって大きく異なることがわかった。5)石英のラジカルの寿命は不活性ガス中では極めて長時間(80日以上)保たれることが明らかとなり,粉砕操作後に重合反応を行わせる後重合も十分可能であることがわかった。
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