研究概要 |
火力発電所などから排出される炭酸ガスを、微細藻類の光合成によって固定し、得られた藻バイオマスから水素を生産する方法について研究した。海水資源の利用を考慮して、光合成能および水素生産能がとも高い海産性緑藻(Chlamydomonas sp.MGA161)を分離した。本年度は,備品としてCO_2ガステクタ-を購入し、この緑藻の光合成および水素代謝に及ぼす炭酸ガス濃度の影響を中心に検討した。 この緑藻は、火力発電所の排気ガスを想定した高濃度(15%)炭酸ガス通気条件下で培養したとき、30℃では良好な炭酸ガス固定能を示し、また、高い水素発生能を維持していた。一方,培養温度15℃では通常でも増殖速度は低下するが、15%炭酸ガス通気条件ではその影響が更に強く認められた。しかし、この時、増殖が抑制されるほど細胞内に蓄積されるデンプン量が増加した。その細胞を回収し、30℃,暗嫌気条件で発酵させると、デンプン分解が促進され、水素などの醗酵産物の生産量が顕著に増加した。 低温度条件を定期的に解除することにより、低温度/高炭酸ガス条件で培養することの利点(デンプン含量が多く、醗酵時のデンプン分解能および醗酵産物生産能が高いこと)を維持し、なおかつその短所である低い増殖能(主にラグタイムが長いこと)を改善することが可能となった。また、低温度/高炭酸ガス条件への適応現象は比較的短時間で起こることが認められた。したがって、増殖速度の高い基本条件(30℃、5%CO_2)から低温度/高炭酸ガス条件(15℃、15%CO_2)に切り替える二段階培養システムの有効性が示唆されたので今後の検討課題としたい。
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