研究概要 |
前年度作製した大流量(2.8l/min)連続混合型凝縮核計数器の性能をさらに向上させるために次の検討を行った.まず,検出しようとする超微粒子の表面に凝縮させる蒸気の種類が,各種操作条件と,粒子計数効率を支配する粒子がおかれる雰囲気の過飽和度の形成にどのような影響を及ぼすかについて理論計算を行った.そして適当と予想される,(i)エチレングリコ-ル,(ii)ジエチレングリコ-ル,(iii)トリエチレングリコ-ルの3種類について実験的に検討を行った.その結果,前記(ii)および(iii)の凝縮液を用いることによって,粒子計数効率が粒径が10nmと5nmの粒子に対してそれぞれ100%と70%という好結果が得られた.このような良好な計数効率の得られる条件は,古典的な核生成理論(BeckerーDohringーZeldvichの理論)で均一相核生成が起こる(核となる粒子がなくて蒸気相から直接粒子が生成する)臨界過飽和度にできるだけ近い過飽和雰囲気を形成させることが重要であることが明かとなった. この検討結果をもとにして,さらに装置の改良と大型化を行い,5倍の流量(14l/min)をもった装置を作製しその性能試験を行った結果,上とほぼ同様の高性能化がはかれることが分かった.この結果は,既存の凝縮核計数器に比べ約50倍の大流量化が,性能の低下を招くことなくはかれたことを示し,したがって,従来の1/50の濃度の超清浄空間の超微粒子の検出が可能になったことを示すものである.このような高性能・大流量化された凝縮核計数器が開発されたことにより,当初予定していなかったこの装置の新しい応用分野が開け,積算型静電粒径測定法の開発へと発展した.この新しい手法によって,大気や室内環境中に浮遊する0.1μm程度以下の粒子の粒度分布を迅速に測定できることが実証できた.
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