研究概要 |
本研究では、Acetobacterium woodii(ATCC29683)を使用した。菌株の保存にはクックドミ-ト培地を用い、酢酸生成実験にはKerbyらの報告した培地を改変した合成培地を用いた。この合成培地中でA. woodiiはCO_2ーH_2零囲気下で酢酸を生成することを確認した。 実験では、まずA. woodiiの基礎的酢酸生成特性を検討するため、加圧培養試験管による振とう培養実験を行った。その結果、増殖に対する至適温度が30℃であり、気相中のH_2/CO_2のガス比の増殖に対する影響は酢酸生成に必要な化学量論値よりも2倍ほど高い方が大きいことがわかった。さらに本菌は増殖速度は速いものの、最終菌体濃度が低いレベルで飽和に達することが明らかとなった。以上の結果より、本菌を酢酸生成の目的に供するためには、菌体を高密度に培養しH_2,CO_2ガスを効率的に供給する手段を整えることが重要であることがわかった。 そこで、多孔質板を塔底とする気泡塔型バイオリアクタ-(液量200ml)を試作し、H_2,CO_2の連続的供給を可能とした。フルクト-スを基質として前培養を行った菌体を高濃度に濃縮し、この細胞けん濁液を用いた酢酸生成特性を実験的に検討したところ上述のアプロ-チの有効性を確認した。さらに、菌体の取り扱いを容易にするためにアルギン酸ソ-ダゲルへの固定化を行った。固定化A. woodiiも本バイオリアクタ-内でCO_2を酢酸に変換することを確認した。しかし、工業化を前提とした場合には本システムの酢酸の生産性は低く、次年度においては、培養環境および細胞の調整法について検討を進め、この点に対処するための技術を開発したいと考える。
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