本研究は疎水性基質に対する酵素反応機構を解明するために油水二相系およびマイクロエマルション(ME)系で酵素反応速度を測定した。また膜型バイオリアクタ-の特性について基礎的知手を得る目的で研究を行い、以下のような結論を得た。 1.異なる炭素鎖長を有する2ーナフチルアルキルエステルを溶解したヘプタン相とリパ-ゼを溶解した水相を攪はん槽中で接触させ加水分解反応速度を測定した。二重境膜説により解析し、反応は油水界面で進行し、その速度はミハエリスーメンテン式に従った。ミハエリス定数の値は鎖長の長さに依存せず水相の値よりも大きかった。 2.ME系での酵素反応を界面反応のモデル系として捉え、その反応特性について考察した。 (1)親水性基質アスピリンを用い、ME相での加水分解反応速度を測定した。疎水性酵素リパ-ゼによる反応は親水性基質にも関わらずMEの界面近傍で進行していることが示唆された。一方、親水酵素αーキモトリプシンの場合はMEの水相コア中で反応が進行し、その速度定数は水分量に比例した。 (2)疎水性基質2ーナフチルアセテ-トの加水分解反応速度を(1)と同様に測定した。反応はMEの界面で進行し、リパ-ゼを用いた場合、ス-パ-アクティブな挙動が観察された。MEのサイズの減少につれ速度定数の値も小さくなった。αーキモトリプシンでは、(1)と同様に速度定数は水分量と共に大きくなった。 3.膜型バイオリアクタ-の特性を把握し、疎水性基質に対する酵素反応の反応率を向上させることを目的に研究を計画した。そこで予備実験として、ME中に包括した酵素により2ーナフチルアセテ-トの加水分解反応を行い、生成物である2ーナフト-ルを水相に溶解させ反応率の向上を目指した。しかしながら、水相の存在に依っても反応率は余り変化が見られなかったので、今後反応系を再考することが必要であると結論した。
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