シリコ-ンポリマ-包括生体触媒を用いた有機溶媒を含む多様バイオリアクタ-の開発

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02650708
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 川上 幸衛 九州大学, 工学部, 助教授 (70091345)
• キーワード: 固定化生体触媒 / バイオリアクタ- / 非水溶媒 / シリコ-ンポリマ- / エポキシ化 / バイオコンバ-ジョン

研究概要

非水溶媒中で作用する生体触媒(酵素もしくは微生物)の固定化素材としてのシルコ-ンポリマ-の効用を明らかにする目的で以下の実験的研究を行った。
1.シリコ-ンに包括した個定化酵素:(1)nーヘキサン中の固定化アルコ-ルデヒドロゲナ-ゼによる補酵素再生御伴うシクロペンタノ-ル及びシクロヘキサノンの酸化還元において、シリコ-ン内部への酵素/補酵素水溶液の包括法としては、セファデックスのような親水性固体粒子に含浸させたのち分散固定化をする調製法が、有機溶媒中でも高い活性保持率を与えた。本反応系に対する固定化酵素の水分含量、pHの最適条件を見いだすとともに、若干の速度論的検討を行った。また、シ-ト状に成形した固定化酵素の充填カラムにおいて、液固バイオリアクタ-の連続操作を実現するとともに、操作安定性を調べた。(2)固定化アルコ-ルオキシタ-ゼによるエタノ-ルの酸化において、シリコ-ン素材の優れた酵素透過性の利点を確かめるために、触媒有効係数の評価を行った。トルエン中のブタノ-ルの酸化において、シリコ-ン中への酵素分散のための多孔性固体粒子としてセライトの使用が有効であり、最も高い活性保持率を示した。
2.シリコ-ンとアルギン酸の混合マトリックス中に固定化した微生菌体:固定化 N.corallinaによるnーヘキサデカン中の液状アルケン類のエポキシ化による各種エポキシドの生産に及ぼす複合マトリックスの最適組成について検討した。テトラデサンのエポキシ化ではシリコ-ン80ー90%、オクテンではシリコ-ン40ー60%、スチレンからスチレンオキシドの生成ではシリコ-ンを含まないアルギン酸100%の組成で各エポキシドの生産性は最大となった。このような最適組成の変化は、各反応における基質阻害の程度と深く関連しており、アルギン酸と混合使用したシリコ-ンが疎水性基質の担体内透過性の制御に役立つことがわかった。

研究成果

• [文献書誌] 川上 幸衛: "非水溶媒系のバイオコンバ-ジョンに有効な固定化生体触媒" ACTIVE技術論文集・九州. 4. 115 (1990)
• [文献書誌] K.Kawakami: "Application of Silicone polymer to immobilization of biocatalysts and development of multiphase bioreactors" Proc.APBioChEC'90. 513-516 (1990)
• [文献書誌] K.Kawakami: "Reaction characteristics of microbial cells immobilized in a mixed matrix of silicone polymer and aqueous medium" “Physiology of immobilized cells",de Bont et al.,eds.,Elsevier Sci.Publ.439-444 (1990)
• [文献書誌] K.Kawakami: "Immobilization of microbial cells in a mixed matrix of silicone polymer and calcium alginate gel:epoxidation of lーoctene by Nocardia corallina Bー276 in organic media" Biotechnol.Prog.6. 357-362 (1990)
• [文献書誌] 川上 幸衛: "ノカルディアコラリ-ナの固定化菌体によるオレフィン類のエポキシ化ーシリコ-ンポリマ-及びアルギン酸ゲルからなる複合マトリックスの組成の効果" 化学工学シンポジウムシリ-ズ 化学工学会生物生産工学特別研究会編. (1991)
• [文献書誌] K.Kawakami: "Application of silicone polymer to immobilization of enzyme operating in organic solventーHLADH catalyzed oxidoreduction" Biotechnol.Letters. (1991)