キュウリのアスコルビン酸オキシダ-ゼ(以下AOと略)は同一サブユニットの2量体より成る分子量約130 kDaの糖タンパク質である。サブユニット当り銅4原子を含む酵素であり、その構造と機能の相間に興味が持たれている。我々は1989年にキュウリのcDNAの構造を決定したが、ほぼ同時にMax PlanckのHuberらはズッキニのAOの3次元構造を明らかにした。両者のアミノ酸配列は89%が一致した。 部位特異的変異の導入などにより、機能と構造を調べる上で、このcDNAを大腸菌または他の微生物で大量に発現させることが、まず必須である。微生物での活性のあるAOの生成にはまだ成功していないが、以下に経過を報告する。 1.AO遺伝子の微生物での発現:AOのcDNAを大腸菌での高発現ベクタ-、pKK233ー2のtacプロモ-タ-の下流に挿入し、E.coli JM105を宿主としてIPTGで発現を誘導した。SDSーPAGE、ウエスタンブロッティングにより、全タンパク質の10%がAOであったが、封入体を形成しており、培養条件を種々検討したが酵素活性は検出されなかった。封入体タンパク質を尿素または塩酸グアニジンで変性させ、種々の再構成実験を試みたが成功しなかった。細胞外への分泌させることを目的にとしたBacillus brevisの系ではAO mRNAを検出できなかった。cDNAを酵母の酸性ホスファタ-ゼまたはAOのリ-ダ-配列に連結しPHO5プロモ-タ-のもとでSaccharomyces cerevisiaeで発現させたが、活性のあるタンパク質は生成されなかった。 2.AOゲノム遺伝子のクロ-ニング:cDNAは逆転写酵素のミスリ-ディングを含む可能性がある。cDNAをプロ-ブにゲノムライブラリ-からゲノム遺伝子をクロ-ニングした。4エキソンから成っていたが、コ-ド領域の塩基配列はcDNAと完全に一致していた。
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