研究概要 |
多年生他殖性のマメ科牧草バ-ズフット・トレフォイル(Lotus corniculatus L.)の品種Vikingの種子由来の集団(以下S集団と記す)と一個のプロトプラスト由来のプロトクロ-ン集団(以下P集団と記す)を育成し、収量形質,花粉稔性,家畜に有害なHCN含量及び染色体変異について比較検討した。プロトプラスト単離のためのカルスはHCN以外の形質に関してS集団の平均値に近い個体より誘導した。プロトクロ-ン60個体中倍数体及び24ー48の混数体がそれぞれ1個体づつ出現した。収量形質である草丈,最大節間長、茎の太さ,葉身長,葉巾長の平均値はP集団はS集団より有意に小さかった。しかし全ての形質でプロトプラストを単離した親より大きな値を示す個体があり、このような変異を育種に利用可能であることを示唆した。HCN含量については最低と最高濃度間を5段階に分け,個体の含量を分類した。その結果S集団は最低から最高含量までの変異が見られた。一方P集団は最高含量の個体を親としているが,変異が小さく安定的であった。しかし低含量の個体も出現しているので,育種への応用の可能性があるものと考えられる。またプロトプラスト由来の個体の減数分裂を調査したところ、第1分裂中期に一価染色体,第1および第2分裂後期に遅滞染色体や染色体橋が多く観察されたことから,逆位などを含む染色体の構造的変異が起っており、花粉稔性の低下の一因と考えられた。光学顕微鏡下での体細胞染色体の観察では染色体構造異常を検出することができなかったことから,減数分裂の異常によって推定される染色体構造異常は小規模のものと推定された。したがって収量形質の変異においてもpolygenicな突然変異だけでなく染色体突然変異も関与していると思われる。これらの結果はひとつのプロトプラストより由来したカルスから再生したプロトクロ-ン集団に見られる変異であり,外植片に存在していたものではない。
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