研究概要 |
Lotus corniculatus L.の8個体より誘導したカルス8系統について,抽出したDNAをEcoRIで処理し,3つのミトコンドリア遺伝子をプロ-ブとしてハイブリダイゼ-ションしたところ,多くの異なる断片パタ-ンが見られた。これは培養中に生じたmtDNAの塩基レベルのソマクロ-ナル変異も含まれると推定されるが、それ以外に他殖性かつ合成品種である親集団の多型の存在をも示唆する。また種子集団より2個体及びプロトクロ-ン集団より5個体の葉のDNAについて調査した結果、種子由来2個体について制限酵素とプロ-ブの48組合せの中で,異なる断片パタ-ンを示したものが約13%存在した。プロトクロ-ン5系統は48組合せ中、種子由来個体Sー3とほとんど一致し、同一のmtDNAを持つと推定されたが,EcoRIとcoxI及びSalIとcoxIにおいてSー3と異なる断片が見出され,その頻度は約4%であった。しかし興味あることは,この変異断片が種子由来の他の1個体oー61の断片サイズと一致することであった。このことはmtDNAは変異を起こしやすい部分が存在するか、あるいは変異の仕方に一定の方向性があることを示唆しているものと思われる。またプロトクロ-ン11個体について核遺伝子であるRubisco小サブユニットrbc3Aー1,phenylalanine ammonia lyase(PAL),及び5.8S,17S,25Sリボゾ-マルRNAの遺伝子を持つプラスミドpRR217をプロ-ブとしてサザン・ブロッティングを行ったところ,2種類の制限酵素と2種類のプロ-ブ4組合せでDNA断片パタ-ンには相違が全く見られなかった。従って調査された核遺伝子及びその周辺のDNAは安定していると考えられるが,他の核遺伝子についても実験を重ねる必要があろう。また種子由来の親集団のミトコンドリアDNAのように,核DNAについても多型現象が見られるか,検討する必要がある。
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