研究概要 |
多年性の他殖性マメ科牧草バ-ズフット・トレフォイル(Lotus corniculatus L.)の品種vikingの種子由来の集団(以下S集団と記す)と一個のプロトプラスト由来のプロトクロ-ン集団(以下P集団と記す)を育成し、諸形質について比較検討した。草丈、茎の太さ等の収量形貭についてはP集団がS集団より有意に小さかった。しかし全ての形貭でプロトプラストを単離した親より大きな値を示す個体があり、このような変異を育種に利用可能なことを示唆した。家蓄に有害なHCN含量についても低含量のものが得られた。またP集団の減数分裂を調査したところ、第1分裂中期に一価染色体,第1および第2分裂後期に遅滞染色染色体橋が観察され、逆位などを含む染色体の構造的変異が起っており、花粉稔性の低下の一因と考えられた。これらの結果はひとつのプロトプラストに由来した集団に見られる変異であり、外殖片に存在していたものではない。またS集団より2個体およびP集団より5個の葉のmtDNAをサザン・ブロッティングによって調査したところ、制限酵素とプロ-ブ48組合せ中、種子由来2個体間で約13%の違いが見られ多型性を示した。プロトクロ-ン5個体間では約4%の違いが見られ,DNAレベルの変異が起きていることが明らかになった。また興味のあることは,この変異DNA断片が種子由来個体のものと一致し,変異を起こしやすい部分、あるいは変異の仕方に一定の方向性があることを示唆した。またプロトクロ-ンの核遺伝子についてはRubisco小サブユニットrbc3Aー1,phenylalanine ammonia lyaseおよびリボゾ-マルRNAの遺伝子を持つpRR217をプロ-ブとしてサザン・ブロッティングしたところDNA断片パタ-ンには相違が全く見られなかった。従って調査された核遺伝子およびその周辺のDNAは非常に安定していると考えられる。今後は葉緑体DNAの調査をすることも望まれる。
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