研究概要 |
近年多くの植物で体細胞胚発生が報告され、その人工種子への利用も開発されつつある。体細胞胚に種子同様の乾燥抵抗性を付与することは人工種子への応用だけでなく、遺伝子源の保存や種子の持つ乾燥抵抗性の解明等基礎および応用面での利用価値が高い。そこで、本年度はブロッコリ-の花粉由来胚を用い、アブサイシン酸(ABA)処理による乾燥抵抗性の獲得について検討した。その結果ABAの効果が劇的であることが明らかとなった。 ブロッコリ-2系統(B31ー18,B63)の花粉由来の不定胚を10^<ー6>〜10^<ー4>のABAで7日間処理し、その後徐々に乾燥させ(最終的に胚の水分含量は10%前後となる)、乾燥胚からの発芽および植物体再生を調査した。胚はABA処理により乾燥抵抗性を獲得した。特に、乾燥抵抗性の獲得は胚のサイズおよびABA濃度と密接に関係し、10^<ー5>〜10^<ー4>MのABA処理により子葉胚では平均55%(最高80%)の発芽率および平均35%(最高60%)の植物体再生率を示した。一方、ABA無処理の胚は乾燥処理によりすべて枯死した。また球状胚はABA処理によっても乾燥抵抗性を獲得することができなかった。次にABA処理期間について検討したところ1日処理でも乾燥抵抗性を得ることが明かとなった。乾燥胚から再生した植物を非乾燥胚由来の植物と比較したところ形態および倍数性について差は認められなかった。現在、白菜の花粉由来胚について乾燥抵抗性に対するABAの効果を検討するとともに、胚のタンパク質レベルでの分析を進めている。
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