Brassica属作物(ブロッコリー、白菜、ナタネ)の花粉由来胚がABAにより乾燥耐性を獲得することはすでに報告している。この耐性獲得の機構を明かにするため、乾燥耐性誘発に対する浸透ストレスの影響を調査し、また乾燥耐性胚のタンパク質の分析および遺伝子の単離を行った。白菜2系統の花粉由来胚を用いて8.5-14.5%濃度のソルビトールで処理したところ17.6-6.3%の発芽率、8.3-1.3%の植物体再生率を示し、低頻度ではあるが乾燥耐性を獲得した。しかし、最も効果のあった10.5%ソルビトールでも8.3%の植物体再生率しか得られず(ABA処理では38%の再生率)、浸透圧は直接胚の乾燥耐性には関与していないことが推察された。一方、乾燥耐性獲得胚をSDS電気泳動およびナタネの貯蔵タンパク質の一つであるクルシフェリンに対する抗体を用いてウェスタンブロットを行った結果、ABAにより胚は種子貯蔵タンパク質を増加させていることが明かとなった。また、二次元電気泳動法により新らたなタンパク質が合成されていることも見いだされた。これらのタンパク質が胚の乾燥耐性となんらかの関係があることが推察された。最近、胚発生の後期にABAで誘導され、乾燥耐性にも関与している可能性のある遺伝子(Lea遺伝子)が数種の植物で見いだされている。そこで、乾燥耐性を獲得とした花粉由来胚でも、これと類似した遺伝子が発現している可能性が考えられ、遺伝子の単離を行った。乾燥耐性を獲得したナタネの花粉由来胚からcDNAライブラリーを作成し、Lea遺伝子(PLEA76)をプローブとしてスクリーニングを行ったところ、6個のクローンが得られ、現在そのクローンの構造解析を進めている。
|