イネ品種「しおかり」とその矮性準同質遺伝子系統を用いて研究課題に関する実験を行い、以下の成果を得た。1.幼苗におけるGA_3とジベレリン合成阻害剤およびIAAとその前駆物質に対する伸長反応性、ならびにIAA含量を調べたところ、それらのいずれにおいても系統間差異が認められた。2.上位2節間のパーオキシダーゼ活性とパーオキシダーゼアイソザイムを生育時期別に調べた。その結果、多くの矮性系統は「しおかり」より活性が高い傾向にあり、とくにSh-d_<13>およびSh-d_6はいずれの節間および時期でも活性が著しく高く、アイソザイムパターンにおいても、全体または特定のバンドが濃かった。そして、第2節間ではパーオキシダーゼ活性と節間長との間に負の相関が認められた。Sh-d_<13>は幼苗期においてもパーオキシダーゼ活性が高かった。なお、パーオキシダーゼアイソザイムの特定のバンドはIAAオキシダーゼ活性をもつことが示唆された。3.上位3節間のリグニン含量を生育時期別に調べた。その結果、出穂期前後のリグニン含有率と節間柔細胞の長さとの間に負の相関が、また、成熟期のリグニン含有率と節間長との間に正の相関が認められた。4.二次元電気泳動法、等電点電気泳動法などによって、矮性系統に特異的に出現または欠失するタンパク質の検出を試みた。しかし、正常系統と矮性系統間で、遺伝的分離様式を解析できるほど明確に異なるスポットまたはバンドは検出できなかった。そこでDNAレベルでの解析を開始した。まず、「しおかり」と8種の矮性準同質遺伝子系統および約180種の10塩基プライマーを用いて、Random amplified polymorphic DNA(RAPD)の検索を行った。その結果、3種の矮性系統において正常系統と異なるDNA断片(RAPD)が検出された。このうち1つのRAPDについて、F_2分離を調べたところ、このDNA断片の有無は3:1に分離した。今後、RAPDと矮性遺伝子との連鎖関係を調査する予定である。
|