イネ基本栄養生長相の遺伝子体系を明らかにするために、探索した早生遺伝子を台中65号へ導入した、所謂同質遺伝子系統を用いて遺伝実験を行っている。既に数種の日本品種より作出された相互転座系統より早生遺伝子を見い出し、台中65号へ導入したが、いずれも第7染色体の早生遺伝子Efー1であった。今回新たに育成した黒色稲ー2に由来する新早生遺伝子Efーxを持つ台中65号の同質系統T65・Efーxを用いて、同早生遺伝子の作用と座乗染色体のスクリ-ニングを行った。Efーxによる早生化作用は自然水田では低いが、高温下では大きかった。従って、Efーxは温度感応性早生遺伝子であると考えられる。また、Efー1と共存することにより相乗効果を示した。次にT65・Efーxと38種の台中65号の同質相互転座系統とのF_2植物を用いて連鎖分析を行った。その結果からEfーxは第8染色体に座乗していることが推定された。また、2相互転座系統は早生遺伝子を持っていることが判ったが、RT5ー10a・T65の持つ早生遺伝子はEfーxであること、RT6ー10・T65の持つ早生遺伝子Efーyは転座点6ー10と強く連鎖していることが明らかとなった。第6、第10染色体に座乗する早生遺伝子の報告は未だ見ないことから、Efーyも新早生遺伝子であると考えられる。 外国稲より早生遺伝子を探索するために、IRRIの育成品種と台中65号の間で交雑を行った。IR品種の出穂期は様々であったが、F_1は両親より早生となった。従って、IR品種はいずれも台中65号とは異なる早生遺伝子を持つことになる。10組合を任意に選び、F_2分離を調べた。いずれも連続多頂典線分布を示したが、各個体群より任意に選抜し、台中65号で戻し交雑を行っている。なお、IR8、タイ国の陸稲4品種、深水水田品種並びに浮稲品種より早生・晩生遺伝子を見い出しており、それらの遺伝子の台中65号への導入を図っている。TPG161由来の早生遺伝子を持つ系統は長い葯を作ることから、それは耐冷性育種に資すると思われる。
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