本研究の目的は、1)水稲玄米中のアンモニア濃度と粒重増加との関係を調査し、アンモニアがでんぷん合成を阻害しているとの、従来我々が得た結果を再確認すること、2)次に、このアンモニアが根の活力が低下したとき根から直接穂に移行しているのではないかとの推論をたて、茎基部からのアンモニア濃度と根の呼吸速度との関係を明らかにすることである。 1)に関する方法と結果 平成2年度は1粒重が極端に異なる2品種をポット栽培し、粒重増加に差をつけるために出穂期より、遮光、多追肥、剪葉などの処理をした。これらの出穂後16日までの粗玄米千粒重を調査し、玄米中のアンモニア濃度と粗玄米千粒重との間には、品種ごとに負の相関関係が成立した。平成3年度は、異なる窒素レベルで生育した圃場の水稲についても前年度と同様の関係が得られるかを検討した結果、穂揃後30日までの玄米中アンモニア濃度が高いものは、粒重増加が抑制されていた。そして、そのアンモニア濃度と葉身N濃度とは高い正の相関が得られた。これらより、登熟初期に過度に葉身N濃度を上げると玄米中アンモニア濃度が高まり、粒重増加が抑制されることが明らかとなった。 2)に関する方法と結果 両年にわたって水稲茎基部からの出液中のアンモニア濃度と根の呼吸速度との関係を調査した結果、両者には明確な関係は得られなかった。しかしながら、75%遮光した稲の出液中のアンモニア濃度は、他の処理区より極めて高い値であった。遮光区の出液中のアンモニア濃度がなぜ高い値となったかについても明らかにできなかったが、この区の根中の全糖含有率がきわめて低いという事実があるので、この点を手がかりに根の呼吸との関係を解明していく必要がある。
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