研究概要 |
水田転換畑で栽培したダイズに土壌の過湿処理を行うと,乾物生産が減少して子実収量が低下することを著者らは明らかにしている。土壌過湿による乾物生産の減少は,光合成速度の低下に起因すると考えられるが,ダイズをはじめとして,土壌過湿が光合成速度に及ぼす影響について検討した報告例は少ない。 ところで,作物の個体は葉齢の異なる種々の葉身で構成されているが,各葉身における光合成速度はその葉齢によって過湿障害の受け方が異なることが予想される。本研究では,ダイズ品種タマホマレを供試して,開花期と登熟期に土壌の過湿処理を行い,これが葉位別光合成速度に及ぼす影響について検討するとともに,圃場における土壌過湿による減収機構についても考察した。土壌の過湿処理は,地下水位を5〜7cmに維持した湿潤区,地上水位を2〜3cmとした湛水区を設け,7日間実施した。光合成速度は携帯用光合成蒸散測定装置を用いて,屋外で測定した。その結果, 1.湛水区では,いずれの葉位においても生育段階にかかわりなく,光合成速度は顕著に低下した。 2.湿潤区では生育段階により異なり,開花期ではいずれの葉位の光合成速度も顕著に低下したが,登熟期になると,葉齢の進んだ葉以外はあまり低下しなかった。 3.過湿処理による光合成速度の低下は,開花期においては莢数の減少を,登熟期においては粒重の減少を引き起こし減収の原因になったものと考えられた。
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