研究概要 |
ダイズは,過湿条件におかれると地下部からの窒素供給が著しく制限されるために,体内窒素が不足して乾物生産ならびに子実収量の低下をきたすことを著者らは明らかにしているが,本研究では,近年広く試みられるようになってきた開花期以降の窒素追肥が湿害軽減に有効であるかどうかについて検討を行った. 本研究は,圃場実験とポット実験から成り立っている.圃場実験では,湿害発生後の窒素追肥が子実収量に及ぼす影響について検討した.その結果,窒素追肥が子実収量の回復に有効であることがわかったので,そのメカニズムを明らかにするためにポット実験を行った. 1.水田転換畑でダイズ品種タマホマレを栽培し,花芽分化期に畦間に5〜8cmの深さに水を溜めて過湿処理を行った.過湿処理終了後,硫安を窒素成分で12gm^<ー2>追肥した。その結果,無過湿区では追肥をしても増収しなかったが,過湿区では追肥により17〜18%増収した.増収は,莢数の増加によってもたらされた. 2.窒素追肥による莢数増加の原因について調べた.水田土壌を充填したポットにタマホマレを栽培し,花芽分化期に地下水化が5〜7cmとなるようにポットを水槽につけた湿潤区,地上水位が2〜3cmとなるようにした湛水区,ならびに適宜潅水した適湿区を設け,過湿処理終了後に硫安をポット当たり5g施用した.湿潤区と湛水区の非追肥区では,総節数と筋当たり莢数が減少した.その結果,総莢数が減少して子実収量が低下した.一方,湿潤区と湛水区の追肥区では,節当たり莢数が増加することによって総莢数の増大がもたらされ,子実収量が回復した.節当たり莢数の増加は,窒素追肥によって光合成速度が増大した結果と考えらた.
|