本研究は、ヤムイモ(Dioscorea spp.)の塊茎の肥大生長を誘起する外的要因と内的要因を生理学的な面から明らかにすることを目的とし、生活環を制御する日長や温度などの気象的要因と内生的な植物生理活性物質について解析を行うものである。 4月、5月および6月の3時期に植付けを行って、9月、10月、11月および12月の4回にわたって塊茎の生長量を測定した。その結果、塊茎の肥大生長の開始期は植付け期をかえてもほとんど変動しなかった。これは、塊茎の肥大生長が環境的要因によって支配されている可能性を示唆するものであった。 生育初期の植物に対して、9時間日長で30回の処理を施すと塊茎の肥大生長が誘起され、生育中期の植物では、11時間日長で10回の処理によって塊茎の肥大生長が誘起された。しかし、生育初期における15時間日長の50回処理と生育中期における12時間日長の30回処理はいずれも無効であった。夜間の低温は、塊茎の肥大生長の誘起に対して全く作用しなかったが、すでに肥大を開始した塊茎に対しては、その生長を促進した。 以上の結果から、短日はヤムイモの塊茎の肥大生長を支配する主要因であることが明らかとなった。 短日処理によって塊茎の肥大生長期を早めた場合に、塊茎の成熟期がどのように変化するかを測定した。その結果、肥大生長期を早めるとその期間だけ成熟期が早まることがわかった。これは、暖地におけるヤムイモの周年栽培の可能性を示唆するものであった。 ヤムイモの腋芽を含む茎の切片を無菌的に培養した場合、ムカゴは容易に形成される。生理活性物質を添加した培地にこのムカゴを置床して、その生長を測定する新しい生物検定法が確立されつつある。
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