ヤムイモ(Dioscorea alata L.)の塊茎の肥大生響を誘起させる環境的要因を明らかにするために、日長と温度の影響について解析を行った。 生育初期の幼植物では、9時間日長で30回以上の短日処理によって塊茎の肥大生長が誘起され、短日処理回数の増加にともなって塊茎の重量は大となった。生育中期では、11時間日長で10回の短日処理によって塊茎の肥大生長が誘起され、生育の進行に伴う加齢効果が認められた。 夜間の低温には、塊茎の肥大生長を誘起させるような作用は全く認められなかったが、すでに肥大生長を開始していた塊茎に対して低温はその生長を促進した。 以上の結果から、塊茎の肥大生長を誘起させる要因としての低温の単独効果は認められなかったことから、短日はヤムイモの塊茎の肥大生長を支配する主要因であることが明確にされた。 生育中期の植物の短日に対する反応の程度は、品種間で異なるが、感光性の強い品種でも11時間日長の5回の処理によって肥大生長が誘起された。そして、この短日処理効果は塊茎の成熟生長にまで及び、処理によって感熟期の塊茎の水分含量が低下し、汁液(トロロ)の粘度が上昇した。 以上の結果から短日は、ヤムイモ塊茎の肥大生長の開始を支配するのみでなく、成熟生長をも促進する効果を有することが明らかになった。 ヤムイモ塊茎の肥大生長に光周性が認められたことから、光周反応によって形成される植物生理活性物質の存在が推定されるが、未だその活性物質の生物検定法が見当らない。著者は、組織培養によって形成されるヤムイモのムカゴを検定材料として要因物質を検出する方法の確立を目指し、研究を継続している。
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