初年度は、事例研究の対象を日本国内における戦前の都市公園に限定して実施した。具体的には、東京の日比谷公園、震災復興52小公園ならびに大阪、京都、神戸においてこの時期に開園された3つの都市公園である。これらの都市公園の平面形態を(1)形態要素、(2)形態構成、(3)形態構造の3つの段階において分析を行ない、以下の知見を得た。 ・震災復興小公園の平面構成は、平面形態を構成する軸の数とそれによって分割される図形の輪郭形によって分類することが可能である。その結果、「空間連結型」、「分節シンメトリ-型」、「一体シンメトリ-型」、「空間分節型」、「重複型」の5つのタイプを見いだすことができた。 ・公園の中に設置された樹木群と諸施設の配置形態の分析から、空間軸の象徴的表現、空間輪郭の明示、空間の等質化、空間機能の直接的・間接的表示、といった形態構成上の特徴が抽出された。 ・形態構成上の特徴が、一つの公園空間の内部に共存している状態を説明する形態構造的な概念として、形態の求心性と拡散性、完結性と部分拡張性、外部閉鎖性と内部拡張性、という3対の対立項を指摘することができた。 ・日比谷公園の平面形態は、全体を小公園のコラ-ジュとして理解することが可能であり、各部分の平面形態においては上記のような分析手法が有効であることが確認された。しかし、全体的な平面形態におけてる要素、構成、構造間の関係は、周辺の都市空間の変容と関連づけて分析する必要があることが確認された。 ・戦前の大阪、京都において設計された都市公園では、敷地の立地する地域の固有性が強調される傾向が強く、震災復興小公園や日比谷公園のような特徴を明確に指摘することはできなかった。
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