本研究では果樹の生長周期とタンパク質代謝との関係を明らかにし、それらを人為的に制御可能とするため、リンゴ、ウメ、ブドウ、カンキツを実験材料に用い、先ず本年度は葉及び樹皮中のタンパク質含量の季節的変化並びにリンゴについては萌芽時の温度や植物生長調節物質とタンパク質含量との関係について調査した。リンゴでは夏季に葉と樹皮中に多くのタンパク質を蓄積し、葉では、落葉前になると減少するが、樹皮中ではその後も増加が続いた。ただし、樹皮中の貯蔵タンパク質は開花及び萌芽時に急減した。一方、常緑果樹であるカンキツでは、落葉果樹に比較して葉及び樹皮中のタンパク質含量が極めて高く、秋季まで一定割合で両器官に蓄積した。しかし、リンゴと同様に葉及び樹皮中の貯蔵タンパク質は春先に急減した。他方、ブドウでは夏季に葉や樹皮中にタンパク質を蓄積するが、秋季になると減少し、また萌芽時の量的変化は認められなかった。なお、ウメでは年間を通して葉、樹皮中ともにタンパク質含量の変化は起こらなかった。 萌芽期の温度及び植物生長調節物質処理と樹皮中のタンパク質含量の変化との関係をリンゴの切り枝で調査した結果、開花及び萌芽時の温度が高いほど樹皮中のタンパク質の分解が促進された。また、すべての芽を除去した後、各種植物生長調節物質を処理すると、処理15日目ではABA、GA_<4+7>、NAA処理区でタンパク質の分解が促進され、逆にGA_<4+7>+NAA+BA処理区では分解が抑制された。 以上の結果から、果樹の種類により葉や樹皮中のタンパク質含量とその経時的変化及び冬季の貯蔵器官の違い並びに春季の初期生長にタンパク質を必要とする果樹とそうでない果樹のあることが判明した。また、リンゴでは萌芽期に内生の植物生長調節物質がタンパクの分解に関与していることが明らかとなった。
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