果樹の生長周期とタンパク質代謝との関係を明らかにし、それらを人為的に制御可能とするため、本年度はニホンナシ(幸水)を用い、葉及び樹皮中のタンパク質含量の季節的変化、萌芽時の植物生長調節物質処理とタンパク質含量との関係を調査するとともに、花芽分化期前後の内生植物ホルモンの定量・定性を行なった。 ニホンナシ樹皮中のタンパク質含量は、リンゴ、ウメ、ブドウ、カンキツに比較して極めて少なかった。最も含量が高くなった5月中旬でも約2mg/g fwであり、その後漸減し、7〜12月まではほぼ一定で約0.6mg/g fwであった。一方、葉中のタンパク質含量は樹皮に比較して著しく高く、5月中旬には約11mg/g fwで、その後減少するが、8月頃より再び増加し、9月中旬にピ-ク(約16mg/g fw)に達した。 切り枝の基部より各種植物生長調節物質を吸収させると、GA_3区では新梢伸長を著しく促進したが、合成サイトカイニンであるKTー30区では逆に抑制された。タンパク質含量はABA、KTー30両区で、一時的に急増するが、GA_3区では、新梢伸長にともなって減少する傾向が認められた。 ニホンナシの枝中のジベレリンをGC/MSで同定した結果、GA_9、GA_<19>、GA_<24>、GA_<44>、GA_<53>、3ーepiーGA_4の7種が確認された。この中で主要なジベレリンはGA_<19>とGA_<23>であり、これらは6月から8月にかけて減少するが、花芽分化期である9月初めには均に増加した。他方、樹皮中にはIAA、ABAの存在も確認された。 以上の結果から、ニホンナシにおいても内生植物生長物質がタンパク質代謝に関与していることが明らかとなった。今後はそれぞれの果樹の内生主要物ホルモンを用いることによって、これらの関係がより明らかにされるであろう。
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