普通核型分析には根端組織を用いて行なわれるが、クルミは挿木が不可能なために根端を利用するためには実生苗に頼らざるを得ない。 よって、同一個体の染色体を詳細に分析することが困難であるので、先ず根端組織を用いた場合と、生長点組織を用いたときの核型の違いをNーbandのAgーI法を用いて検討した。 染色体の構成を篠遠の核型の表わし方(1943)に準じ、個々の染色体の全長により、全長の最大のものから最大の1/2までのものをAの組とし、次のものからその1/2までをBの組として核型を表らわした場合、2x美鶴自然授粉実生個体の染色体長は、根端の場合1.73±0.43μmで、2x美鶴No.552の生長点繊織の場合では2.42±0.59μmであり、2x美鶴自然授粉実生の根端の染色体長は、生長点を材料とした場合よりやゝ短かかったが、染色体の標本ごとの差を考慮すれば、両者に差はないものとみなされた。また、32本(2n=32)の染色体を、個々の染色体の長さにより相同対を求めたところ、両材料区とも16対に分けられ、ともに第XIV対No.27までがA群で、残りがB群とみなされ、この範囲の核型の比較では供試材料による差は認められないものとみなされた。 そして、両材料区の核型は、2n=32=27A+5Bと表らわされた。また、両系統とも第I染色体No.1、2は一方が頭(caput型)で、他方は角(seta型)であった。
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