ワサビ(Wasabia japonica)とワサビダイコン(Armoracia rusticana)の雑種胚珠培養における効率的雑種獲得のための胚珠の最適置床時期を探るため、雑腫胚の発育あるいは崩壊時期を調査した。胚発育過程の観察に先立って、ワサビ×ワサビダイコンおよびワサビダイコン×ワサビの花粉管の伸長を蛍光顕微鏡で観察したところ、両組み合わせとも花粉管は胚のうに達しており、受精は行われるものと推察された。また、交配後の胚発育を経時的に観察したところ、ワサビ×ワサビダイコンでは交配後10日目で32%の胚生存率が30日目で7%に、ワサビダイコン×ワサビでは10日目で26%であったものが、30日目では観察したすべての胚が崩壊していた。これらのことから効率的に雑種個体を得るための胚珠培養における最適置床時期は、交配後10日目前後の比較的早い段階であると結論され、培養系の確立に向け大きく前進した。また、すでに得られたワサビ×ワサビダイコンの雑種の形質はいずれも形態的にはワサビに近いものであるが、来年度は茎頂培養により増殖した個体のほ場での本格的形質検定が行える見通しとなった。時同に、これら雑種のコルヒチンによる複二倍体化を組織培養法により行う予定である。一方、プロトプラストの電気融合による雑種作出は成功しておらず、融合からカルス形成後の植物体形成の条件を検討中である。
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