研究概要 |
1.カラタチ‘ヒリュウ'の自家受粉種子を播種し,これらの実生のGOTアイソザイム遺伝子型を分析し,珠心胚実生(HP・HF)と交雑実生(HP・HF以外)を識別し,個々の交雑実生の遺伝子型を決定した。これらの遺伝子型から,‘ヒリュウ'の自家交雑実性においては,極矮性型,ヒリュウ性,および正常型が15:19:15に分離することを確認した。この分離比はヒリュウの示す矮性が不完全優性を示す矮性遺伝子に支配される可能性を示したが,期待された1:2:1の分離比からややはずれており,この点については来年度再検討する予定である。 2.矮性のシノットを供試し,多数のカンキツと交配し,それらの実生における矮性の分離を検討したところ,正常型と矮性の分離は1:1,2:1,12:1の分離比を示した。これらのことからカンキツ類では完全優性は認められず,矮性を示す主遺伝子と共に補足,条件あるいは変更遺伝子の存在が予想された。シノットメヒリュウでは三出葉を示す交雑実生において矮性:正常が1:1に分離したことから,ヒリュ-の矮性遺伝子の発現はみられず,シノットの矮性遺伝子が発現したものと予想された。 3.ヒリュウとカンキツ類の台木品種を交配した結果,現在までのところヒリュウ型の特色を示す矮性の出現は認められない。これらの矮性程度については来年度,さらに詳細に検討する予定である。 4.矮性実生根の組織学的調査を行った結果,ヒリュウ正常型実生およびカラタチ実生は3元型を基本としており,ヒリュウ矮性実生とヒリュウ珠心胚実生では4元型が基本であった。またヒリュウ矮性実生においては皮層が著しく厚いことが特筆される。この様な根の特異的な違いと矮性の関係については来年度さらに詳細に検討する予定である。
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