研究概要 |
ヒリュウの自家受粉により作出した正常型,ヒリュウ型及び極矮性型の交雑実生を供試し、形態学的並びに組織学的調査を行った。ヒリュウ型と正常型には形態が著しく異なる点を除いて明瞭な差異は認められなかった。一方、極矮性型実生は形態的にも組織学的にもかなり異なる特性、すなわち、他の2型と比べて根の皮層が厚く、気孔密度が高く、気孔の大きさは小さいなど、が観察された。 シノット×ヒリュウの雑種実生は正常型とシノット矮性型に分離した。シノヅト矮性型実生は正常型と比較してかなり異なる特性、すなわち、小葉、短節間、気孔が大きく密度は低い、木部の発達が早いなど、を示した。同様な傾向はシノットと他のカンキツとの雑種にも認められた。 ヒリョウの極矮性実生はジベレリン5〜25ppmにより顕著に伸長したことから、この極矮性はジベレリン生合成過程を支配する遺伝子突然変異によりものと推測された。 カンキツ品種にブ-ケを交配した所、正常型とブ-ケ矮性型実生がほぼ1:1に分離したことからブ-ケも優性の矮性遺伝子を有することが明らかとなった。他方、カンキツ品種にシノットを交配した場合、複数の遺伝子の関与が示唆された。またカンキツ品種にヒリュウを交配した場合、すべて正常型となり、この単劣性矮性遺伝子が不完全優性を示さないことが明らかとなった。またヒリュウ型矮性には細胞質の関与が示唆された。 以上のことから、少なくとも三つの主動矮性遺伝子があることが明らかとなったが、優良なカンキツ矮性台木の育成のためには、カラタチヒリュウ雑種の持つ幼樹開花性を利用し、シノットの持つ極矮性遺伝子を導入する方法が最も効率の良い育種法であることが示唆された。
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