1.ヒガンバナ料球根植物の種・属間雑種を育成することを目的として、10属26種を用いて他属あるいは他種との交配を試みたところ、四つの組合せによる属間交配と五つの組合せによる種間交配において新個体の作出に成功した。しかし、これらはまだ発芽してまもない状態であるため、新個体の形態的特徴および染色体を調査する段階には至っていない。したがって、得られた新個体が真の交雑種であるのか、あるいは単為生殖によるのかの判定はこれからの課題である。また、比較のために行ったラン料植物の属間交雑においても新個体を得ることができたが、これらは単為生殖によるものであることが分かった。さらに新個体育成の確立を高めるために幼胚を人工培地で培養するための培地条件について検討し、M.S.培地が有効であることを見出した。 2.本実験を遂行するためには開花調節が不可欠である。そこでクリナム、ゼフィランサスおよびハブランサスについて開花調節のための基礎資料を得るための実験を試みたところ、いずれの種類も花芽形成には特定の環境要因を必要とせず、春から秋にかけての生育期間中の仮軸分枝の繰り返しによって数個の花芽を形成させること、また形成した花芽が開花に至るためにクリナムおよびハブランサスでは低温経過を必要とするのに対し、ゼフィランサスでは逆に低温によって発育が仰制することが明らかになった。また、開花期の異なった種類の受粉を容易にするために花粉貯蔵の方法についても検討したところ、5℃の低温であれば少なくとも1カ月程度の貯蔵後においても発芽能力を維持していることが分かった。
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