シロカイガラムシ科内の系統関係を検証する目的で、盤状分泌孔の観察を19種のカイガラムシについておこなった。またこの科の介殻の構造上の特性を明かにするために、巨視的に類似した介殻をつくるConchaspididaeの4種と、キジラミ上科のクロオビカイガラキジラミについて観察した。今回設置されたビジュアル・プリンタ-を用いて走査電子顕微鏡画像を記録し、重要な画像のみCRT上で撮影した。シロカイガラムシ科の生殖門周囲孔と気門周辺孔にはそれぞれ数型があり、これらの組み合わせが光学顕微鏡観察に基づく系統関係とよく一致すること、このことによって型の進化的解釈が可能なことを示した。また、盤状分泌孔から分泌されるワックスを観察し、ワックス・リングが作られる機構を明かにした。この研究によって、介殻形成の進化を追及するための科内の大まかな系統関係が一層確実なものとなった。Conchaspididaeの介殻の切断面を精査した結果、肛門より排出されたと考えられる無形の物質が主要な構成材料であり、体表の管状器官から分泌されたワックスはその中に埋没して補強材として使われていることがわかった。1種では管状器官を欠き、介殻は完全に肛門排出物質よりなる。(なお、盤状分泌孔からはワックス・リングが作られるが、その機構はシロカイガラムシ科とは異なる独自のものであることも判明した。)クロオビカイガラキジラミの介殻は微細構造ではConchaspididaeの介殻に類似していた。したがってシロカイガラシム科の介殻はワックス・リボンを主要な材料とし肛門排出物質を接着剤として使用している点において特異であり、このことがこの科のなかで介殻形成に向上進化と多様性をもたらした一要因であると考えられた。
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